ここ数年、ゲリラ豪雨や台風の被害で「車が水に浸かった」というニュースをよく耳にしませんか? 実はその被害にあった車、いわゆる「水没車」「冠水車」が中古車市場に出回ってしまうことがあるんです。本来なら全損扱いで廃車にすべきなのに、業者によっては外見だけきれいに直して、何も告げずに販売してしまうケースもあります。
この記事では、水没車がなぜ危険なのか、どんなトラブル事例があるのか、法律的にはどう扱われているのか、そして購入者としてできる対策をできるだけわかりやすく解説していきます。ちょっと長めになりますが、「車選びで絶対に失敗したくない!」という方は最後まで読んでみてください。
1. そもそも水没車・冠水車って何?
まず基本から。「水没車」「冠水車」とは、洪水や豪雨で車が水に浸かってしまったものを指します。見た目は修理でピカピカにできても、内部のダメージは隠せません。特に電装系、配線、コンピューター(ECU)は水に弱く、時間が経ってから不具合が出ることも多いんです。
エンジンルームまで浸かると深刻で、たとえ走れる状態に戻しても「いつ止まるかわからない」「突然電気系統が故障する」なんてリスクを常に抱えることになります。
2. 実際にあったトラブルの事例
机上の話ではなく、実際に相談が多く寄せられています。いくつか紹介しますね。
Aさんの場合
Aさんは中古車販売店で車を買いました。納車してすぐにエンジンが止まるトラブルが続き、修理に出しても直らず…。最後は正規ディーラーに持ち込んだところ、「これは水没車です。修理対応できません」と言われたそうです。もちろん、購入時に「水没車だ」という説明は一切なかったとのこと。
Bさんの場合
Bさんは遠方の販売店から車を購入。写真は送ってもらいましたが、エンジンルームの写真はなし。「汚れはないですか?」と念入りに確認したら「きれいな状態です」と返事があったそうです。ところが納車された車は異臭がひどく、エンジンルームは泥とサビだらけ…。完全に説明と違う「冠水車」でした。
3. 水没車を告げずに売るのは違法?
「じゃあ告げずに売るのって違法じゃないの?」と思いますよね。実はちょっとややこしいんです。法律で「水没車は必ず告知しなければならない」と明記されてはいません。つまり、直接的に違法とまでは言えないんです。
ただし、自動車公正取引協議会のガイドラインでは「水没歴は必ず告知すべき」とされています。さらに民法の「契約不適合責任」や「消費者契約法」を使えば、救済が受けられる可能性があります。
契約不適合責任
普通の状態を期待して買ったのに、水没車でまともに動かないなら「契約内容に合っていない」ということになります。この場合は契約解除や損害賠償を求められるわけです。
消費者契約法
販売側が「不利な事実をわざと隠した」場合には、契約を取り消せる可能性があります。水没歴を知っていて黙って売ったのなら、この法律が使えることになります。
4. 水没車のリスク、こんなにある!
水没車は本当に怖いです。理由はいろいろありますが、代表的なリスクを挙げると…
- 電気系統が壊れやすい(数か月後に不具合が出ることも)
- 車体やフレームのサビが進行し、安全性が下がる
- カビや泥の臭いが消えず、乗っていて不快
- ディーラーで修理を断られる場合がある
- 再販時に価値が大幅に下がる
5. 購入時にできるチェックポイント
「買ってから後悔」しないために、次の点は絶対に確認しておきたいところです。
- エンジンルーム、トランク、シート下に泥やサビがないか
- 車内に異臭がしないか実際に確認する
- パワーウィンドウ、ライト、ナビなどの電装品がちゃんと動くか
- 販売店から水没歴の有無を文書で確認する
- 保証があるか、範囲はどうなっているか
- 「安すぎる」価格設定には要注意
6. もし水没車を買ってしまったら
万が一、水没車を買ってしまったら泣き寝入りはしないでください。できることはあります。
- まず販売店に連絡して返金や契約解除を求める
- 民法や消費者契約法を根拠に主張する
- 消費生活センターや弁護士に相談する
- 自動車公正取引協議会に問い合わせる
7. 今後の制度と消費者の自衛
現状では「必ず告知せよ」という法律はないため、どうしてもグレーゾーンが残ります。だからこそ、制度面の整備はこれから必要になるでしょう。ただ、どんな制度が整っても最終的に自分の身を守るのは自分です。知識を持って確認する習慣をつけることが最大の防御策です。
まとめ
豪雨被害で増えている水没車。外見はきれいでも、中身はリスクだらけ。電装系の不具合、サビ、異臭、修理拒否、再販価値の低下…。知らずに買ってしまえば大きな損失につながります。
「安いからお得!」と飛びつく前に、水没歴の有無を必ず確認し、少しでも怪しいと感じたらやめる勇気を持ちましょう。信頼できる業者を選び、確認を怠らないこと。これだけでトラブルを防げる確率はグッと上がります。
中古車選びは慎重さが命。知識を持っていれば、水没車のリスクから自分を守ることができます。

